モーンとリーリエ、雪原の再会 感想
脚本:松井亜弥
演出:牧野吉高
作画監督:伊藤京子、山崎玲愛、倉員千晶
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リーリエ一家は遂に再会!
みなさんアローラ〜。ライターのりょーしです。
本記事は新無印第111話「モーンとリーリエ、雪原の再開」の感想記事になります。
みなさんご存知の通り、この回でリーリエ一家は再会を果たすことができました。
しかしこの回の最も重要なことは再会そのものではなく、ウツロイドが家族に加わったことです。なぜならこのウツロイドは、リーリエ一家4人それぞれのストーリーにおける重要人物となったからです。
というわけで、リーリエ一家4人それぞれのストーリーがどのように雪原の再会に至っているのかを綴ってみたいと思います。
少々長くなりますが、最後にはおたすけ評価もあるので乞うご期待。
余談ですが、本記事内ではリーリエ達家族のことを「リーリエ一家」と呼びます。ポケモンマスターズのイベントで使われた用語です。素晴らしいイベントだったので、興味のある方は本ブログにあるスクショまとめも合わせてどうぞ。
https://otsk-anipoke.com/entry/2018/11/05/154800
リーリエ一家再会までの軌跡
まず参考として、リーリエ一家に起きたことをタイムラインにして置いておきます。
第1編 モーンいなくなる
- ルザミーネがUBに会いたいという夢を持つ
- ルザミーネとモーンが結婚する
- グラジオとリーリエが産まれる
- モーンが旅先で見つけたマギアナを連れ帰る(結局目は覚めず)
- 研究中の事故でモーンがウルトラホールに吸い込まれる
- 関係者全員がモーンは死んだと思い込む
第2編 ルザミーネと子供たちの仲直り
①ザオボーが秘密裏にウルトラホールを開ける(4年前)
1-1.ウルトラホールからウツロイドが出てきてリーリエを襲う
1-2. シルヴァディが助けたリーリエの記憶をザオボーが消す
1-3. リーリエがポケモンに触れなくなる
②ルザミーネと子供達が離れて暮らすようになる
・グラジオが修行のために家を出る
・リーリエがポケモンスクールに通い始める
③リーリエがサトシとシロンに出会う
④リーリエがポケモンに触れるようになる
⑤ザオボーがもう一度リーリエの記憶を消そうとする
5-1. サトシとグラジオがザオボーを止める
⑥ザオボーが汚名返上のためにウツロイドを呼び出す
6-1. ルザミーネがウツロイドに攫われる
⑦リーリエとサトシ達でルザミーネを助ける
番外編 ネクロズマ襲来
- みんなで力を合わせてUB:BLACKことネクロズマを退ける
- みんなで力を合わせてかがやきさまことネクロズマを助ける
第3編 モーン捜索
- グラジオとリーリエがモーンの生存を知る
- リーリエがマギアナ見つける
- リーリエがモーンのZリングを受け継ぐ
- リーリエが氷のZ技を完成させる
- グラジオがモーンのゾロアークと再会する
- ゾロアークのおかげでマギアナが目覚める
- リーリエ達はモーンを探す旅に出る
- リーリエ一家が再会する
モーンのストーリー
雪原の再会はかつての事故でいなくなったモーンを見つける話ですが、彼はただ見つけられるだけの存在ではありません。サンムーンから語られてきた彼のキャラクターがあってこその、モーン自身のストーリーがあるのです。
モーンはとても魅力的な人間だった
サンムーンでは回想の中でしか登場しなかったモーンですが、彼をよく知るザオボー、ハラ、ルザミーネは皆モーンの魅力的な人物像を語ります。
モーン博士は素晴らしい科学者。類まれなる才能とリーダーシップで、我々研究チームを導いてくださっていました。(116話)
モーンと共に研究をしていたザオボーは、科学者としての、そして上司としてのモーンを強く尊敬しています。
ザオボーは同僚のバーネット博士が研究成果を上げることに嫉妬するような小さい男ですが、モーンはそんなザオボーからも信頼を得られる大きな存在だったのです。


モーン君にこのZリングを渡した時のことはよーく覚えておりますぞ。冷静沈着、的確な指示、だが、ここぞという時には熱いバトルをする男でしたな。(116話)
しまキングのハラは、ポケモントレーナーとしてのモーンに好印象を抱いています。モーンが実は生きていると聞けば、戻ったら祝いの宴を開きましょうと即座に提案し、新無印では実際にその宴の様子が描かれました。
モーンは情熱家で、研究者としても父親としても、夫としても尊敬できるステキな人よ。おとぎ話を信じるような夢見がちな面も持ち合わせていて。(116話)
ルザミーネは同僚として、そして家族としてモーンを愛しています。
モーンが信じたおとぎ話がどんなものかは明言されていませんが、なんとなくマギアナに関する伝承とかはまっすぐに信じて研究材料にしていそうです。


グラジオがモーンに頭を撫でてもらったことをよく覚えていたり、赤ちゃんリーリエへのプレゼントとしてマギアナを目覚めさせようと研究したり、随所で語られる家族を大切にする様にルザミーネもステキな父親像を見ていたのでしょう。
モーンの家族愛があってこその再会


そんなモーンがウルトラホールの向こうの世界からこちら側の世界に戻ってこれたのは、ウツロイドがモーンを運んでくれたからでした。
なぜそんなことをしたのかというと、ウツロイドがモーンが持つ家族への思いを感じ取ったからです。
ウツロイドがなぜリーリエになりたかったのかは分からない。ただ、ここでの生活は幸せだったんだろう。
モーンの思いを感じ取ったウツロイドは、グラジオのセリフからもわかる通り、リーリエになりたいと望んだのです。どのような考えがあったのかは分かりませんが、モーンの家族を大切にする気持ちがあったからこそ、ウツロイドの行動を引き出したのです。


更にカンムリ雪原に来てから再開までの間、モーンは自分の娘として共に暮らしたウツロイドに、幸せな日々を与え続けました。
だからこそ再会の時、ウツロイドはリーリエ一家に迎え入れられることを承諾したのです。
このウツロイドを通して、モーンの家族を大切にするキャラクターが再会のストーリーに繋がっているわけですね。
モーンのストーリーとしては家族との再会でピリオドが打たれました。
では、モーンのおかげでウツロイドを家族に招き入れることができたことにはどんな意味があったのでしょうか。
それはズバリ、残された3人のストーリーに繋がっているのです。
ルザミーネのストーリー
上に載せたタイムラインにある通り、リーリエ一家全体のストーリーはルザミーネから始まっているのです。その分ルザミーネには明確なキャラクターとストーリーがあります。
ルザミーネは家族への愛とUBに会う夢、両方の性質を併せ持つ♥
ルザミーネのキャラクターは、2つの強い気持ちによって構成されています。
その1つはもちろん家族愛です。夫であるモーンのことを愛しており、更にリーリエが初めて歩く姿を見た時はこんな表情にもなります。
「あの事故のあとモーン博士の資料は私が全てここに運びました!代表が博士の研究を凍結しようとなさいましたので!」116話リーリエと秘密の機巧姫!(ザオボー)
愛する夫がいなくなった直後にモーンの研究を凍結しようとしたところにも、モーンへの強い気持ちが現れています。
研究の成果や記録を思い出として、それ以上変わらないモノにするためという解釈が妥当でしょう。
「あの頃はあなた達に救われたわ。やんちゃなグラジオとキュートな私の赤ちゃんに」SM116話リーリエと秘密の機巧姫!(ルザミーネ)
夫がいなくなったショックからは、子供たちのおかげで立ち直ることができました。


その後ルザミーネが忙しくなったため子供たちと離れて暮らすことになりましたが、バーネット博士いわく、ルザミーネは仕事で忙しい中でも壁一面に飾っている家族写真を眺めているらしいです。
モーンと同じように、ルザミーネも随所で家族への愛を現しています。
そしてもう1つ、ルザミーネは子供の頃からUBに会いたいという夢をずっと持っているということです。
「私はこの遺跡(日輪の祭壇)のおかげで伝説の戦い、幼い頃父から聞かされた戦いを現実のものとして想像することができたの。そう、今でも1度でいいからUBに会いたいという夢は変わらないわ」SM44話 サトシとほしぐも!不思議な出会い!!(ルザミーネ)
サトシとコスモッグに出会う前に、ルザミーネは自身の夢を語っています。
おとぎ話を信じる夢見がちなモーン、幼い頃に聞いた話をキッカケに長い間夢を抱いたルザミーネ、何か通ずるモノがあったのかもしれませんね。
しかしルザミーネは、この夢のせいで大事な子供たちと衝突してしまいます。
「会いたいか?UBにあの時、UBに襲われた恐怖からリーリエは記憶を封じ込めた。それでも会いたいと思う。そういう人間だよな。」SM49話リーリエとシルヴァディ、よみがえる記憶(グラジオ)
グラジオからするとルザミーネは、例えUBが愛する娘を脅かした存在と知っても、会いたいという夢を捨てない人間に見えています。
そんな印象を与えてしまう程に、ルザミーネは強く夢を求めているのです。
ルザミーネにとってはどっちが大事?
「ホントはさ、あなたとグラジオくんと、一緒にいたいんじゃないかな。」SM48話ゼンリョクポーズでお泊まり会!(バーネット)
グラジオからはルザミーネは家族愛<夢に見えているようですが、バーネットからはそれほど薄情者には見えていません。
他社視点だけでなく、本人の行動を見てみましょう。
「母さんがウルトラホールの研究を凍結だと!?信じられん」SM116話リーリエと秘密の機巧姫!(グラジオ)
前述の通り、モーンがいなくなった時にはウルトラホールの研究を凍結しようとしてました。夢の実現が遠くなるこの行動に、グラジオも驚気を隠せません。やはり本当は家族愛>夢の良いお母さまなんでしょうか。


「マシーンを止めなさい!」「リーリエをまた危険な目に合わせる気!?」SM50話 ザオボーの逆襲!さらわれたほしぐも!! (ルザミーネ)
ザオボーが汚名返上のためにウツロイドを呼び出そうとした時、愛ゆえのガチギレを見せました。やっぱり家族愛>夢かと思いきや。。
ウツロイドが現れた瞬間は怯えるリーリエをかばいながら、なんとこんな顔を見せました。
いや、めちゃくちゃ嬉しそうやんけ。。
ガチギレするほどリーリエのことを気にかけていながらも、夢が叶った瞬間にはその嬉しさを顔に出さずにはいられなかったのです。
つまり論理的結論として、いざという時はどっちの気持ちも優劣無く前に出てきてしまうほど、ルザミーネにとっては両方大事なのです。
この結論を持ってルザミーネと子供たちの仲直り編を見ると、ルザミーネ視点は本当にもどかしいことばかりです。
愛する子供たちとの時間を作ることができない、苦しむ子供たちの助けにもなりきれない、当然の反応とはいえ子供たちからキツい言葉をかけられた、それでも自分の夢や今の仕事を放りだすこともできない。
2つの強い気持ちとそれ故の苦悩、これこそルザミーネが持つリアルな人間味であり、共感を得やすいキャラクターだと思います。
ルザミーネもUBへの警戒を強めた


UBに会うという夢が叶うまでのルザミーネはどちらも取れずに苦悩していましたが、夢が叶った直後はグラジオをかばってウツロイドに攫われます。
残された3人はそれぞれUBとの因縁を持っていますが、ルザミーネとUBの因縁はここから始まります。


ウツロイドに取り込まれたルザミーネは、自分をウツロイドから引き離そうとするリーリエ達から逃げたり、攻撃したりしました。
その半分はルザミーネの意志だとグラジオは推測していましたが、
「長い間UBの研究も続けてきた。お母さまはとても強い人。なのに今は自分一人では動くことのできない操り人形。お願い。出てきて。お母さまなら自分の力で出てこられるはずです。論理的結論として!」SM54話 輝けZパワーリング!超ゼンリョクの1000まんボルト!!(リーリエ)


リーリエにこう言われたルザミーネは、自分を取り込んだウツロイドから出ていく意志を見せました。
やはり逃げたり攻撃したりというのは、ルザミーネを乗っ取っていたウツロイドの意志だったことがわかります。
助けられた後のルザミーネからすれば、助けるために異世界に行くという危険行為を子供たちにさせてしまい、操られていたとはいえ子供たちを攻撃してしまいました。
家族愛と夢が同等に強いルザミーネとしては、負い目を感じるものでしょう。


その負い目があってか、取り込まれたことでUBの危険さを感じてか、その後のルザミーネはウルトラガーディアンズを結成しました。
リーリエたちがネクロズマの世界に行こうとした時は危険すぎるからと制止していましたし、UBを危険な存在として警戒するようになっています。


雪原の再会において、同様にUBを警戒するグラジオはモーンの家にいたウツロイドを攻撃しようとします。ルザミーネはモーンへの刺激を考えて制止しますが、警戒は緩めないようにと釘を指します。
ここまでの流れを見れば当然の反応ですね。
ルザミーネの全てが報われた雪原の再会
そんなルザミーネのストーリーも、雪原の再会が綺麗に完結させます。
まず第1に、愛する夫との再会によってルザミーネは、愛する家族との幸せな生活にやっと戻ることができたことです。
記憶を取り戻したモーンに名前を呼ばれ、涙を流しながら発したのは、「おかえりなさい」でした。
これまでの流れを考えると、ルザミーネの感情がたくさん乗せられためちゃくちゃ重い一言に聞こえますね。
そしてもう1つ、ウツロイドと家族になれたことです。


ルザミーネはUBへの警戒を強めるようになっていましたが、その中でサトシがほしぐも&ベベノムと絆を育む様子も見てきました。
だからこそ、モーンがウツロイドに一緒に暮らさないかと提案した時に、即賛成ができたのです。
ルザミーネのUBに会うという夢は、家族になるというかなり飛び級した形で現実になりました。
これによってルザミーネは、家族を愛する気持ちとかつてUBに憧れた気持ちの両方を成就させたと言えるでしょう。
UBに会う夢とモーンの失踪という2軸が綺麗な形で収束していますが、最も大事なポイントは、前述の通り、ウツロイドが家族に迎え入れられたのはモーンの家族愛のおかげという点です。


離れ離れになって大変なことばかりだったけど、夫婦2人の家族愛によって、ルザミーネのストーリーはこれほどのハッピーエンドに導かれたのです。
グラジオのストーリー
続いてルザミーネと子供たちの仲直り編の立役者であるグラジオについてです。彼の視点から一部始終を見てみると、グラジオの行動原理には多くの変化があります。それがグラジオのストーリーであり、キャラクター描写になっているのです。
焦点を当てるべきは、強くなること、母親の信用度、UBへの敵視の3つです。
グラジオが強さを求める理由
「リーリエがポケモンに触れることが出来なくなったのは、UBに襲われたからだ。俺は恐ろしくてリーリエを助けることが出来なかった」「もう二度と恐ろしい目には合わせない。俺がリーリエを守る。」SM47話グラジオとシルヴァディ!戒めの仮面!!(グラジオ)
グラジオのストーリーはリーリエを守るため、そしてUBを倒すために強くなることを決めたことで始まります。
リーリエが襲われた事件が4年前、グラジオが修行の旅に出たのが半年前です。この3年半がキモになってきます。


「タイプ:ヌル(シルヴァディ)を返してもらいに来たのです。」「シルヴァディを大切にすると偽り、拘束具まで着け監視したお前に返せだと!?」SM49話リーリエとシルヴァディ、よみがえる記憶(ザオボー、グラジオ)
「急にポケモンに触れなくなったこと、おかしいとは思わなかったのか?いくらザオボーが嘘をつき、事実を隠したとしても母親なら…!」SM49話リーリエとシルヴァディ、よみがえる記憶(グラジオ)
この2シーンは、3年半の期間で固まったグラジオの考え方が分かるシーンです。
研究チームのチーフであるザオボーはリーリエを助けてくれたシルヴァディに酷い扱いをしたから信用できない、母親であるルザミーネはUBに会う夢を捨てないから信用できない、だから自分が守るしかないと背負い込んで修行の旅に出たのです。
その決意を持って強くなったグラジオはザオボーとウツロイドからリーリエを守り、攫われたルザミーネを助け出し、4年間の修行が実を結んだ後にはこんなことを言いました。


「旅に出るんだ。今から。」「お前とピカチュウのZわざ、あんなのを見せられてジッとしてられるか。」SM55話 ありがとうソルガレオ!俺たちのほしぐも!!(グラジオ)
周りに頼れる大人もおらず、とにかく自分で考え続けて目的を達成したグラジオですが、その後も強くなろうとした理由は単純明快、衝動に駆られたからなのです。
強くなるための行動から、責任感が強くされどアツい気持ちも持っているキャラクターが見られます。


グラジオが自分を突き動かした存在であるサトシとアローラリーグの決勝を戦う中で二人楽しそうに笑いあう姿を見せたのは、憎しみの気持ちから純粋な衝動へ、理由を変えながらも強さを求め続けた結果というわけですね。
グラジオから見たルザミーネ
すでに少し触れましたが、グラジオからするとルザミーネは、例えUBが愛する娘を脅かした存在と知っても、会いたいという夢を捨てない人間に見えています。
修行に出るまでの3年半で完全にルザミーネへの信用を無くし、自分の手でリーリエを守る・ルザミーネには頼らないという考えに至っています。


リーリエの記憶を再び消そうとしたザオボーが逃げた時も、ザオボーの捜索は任せろと言うルザミーネをガン無視しています。
「サトシ、巻き込んですまなかった。だがここからは、俺たち家族の問題だ」SM51話がんばリーリエ!決意の家出!! (グラジオ)
母親への信用度とは少しだけズレますが、その後ウツロイドに攫われたルザミーネを助けに行く時も、自分とリーリエだけでどうにかすべきと考えていました。
「アローラって色んな事を分け合うんだろ?」「だったらさ、グラジオの家族のことだってみんなで分け合えばいいじゃん。嬉しいことはみんなで喜んで、大変なことはみんなで手伝う。それって最高だよ!」SM51話がんばリーリエ!決意の家出!!(サトシ)
サトシもそんなグラジオに協力を拒否されていましたが、手伝ってもらうという手段を訴え続け、最後にはグラジオもポケモンスクールのみんなと一緒にルザミーネを助けに行くことを認めました。
サトシが分け合うという選択肢を諭し(サトシだけに)、ルザミーネが叶った夢を手放してでも娘の期待を裏切るまいとする意志を見せたことで、グラジオの中で考え方が変わったのでしょう。


その後はネクロズマが現れた時にはルザミーネを介してウルトラガーディアンズに協力し、モーンが生きていることが分かった時にはいち早くルザミーネに報告していました。こうした流れの中でグラジオはルザミーネを協力相手として、そしてもちろん家族として認められるようになったのです。
グラジオにとってUBは倒すべき敵
グラジオからして見れば、UBは妹を脅かす敵でした。
「俺はポケモントレーナーになった。こいつらと一緒に強くなった。UBを1匹残らず倒すために。やつらは人間に災いをもたらす、この世界にあってはならない存在だ」SM47話グラジオとシルヴァディ!戒めの仮面!!(グラジオ)
UBについて少し偏った考えを見せたり、


リーリエを守るため、そしてUBを倒すために強くなったのに、自分をかばった母親が目の前で連れ去られてしまったり、
リーリエを守るという目的を果たした後の修行の旅の途中でも、ネクロズマが現れた時にはウルトラガーディアンズに加勢しに来たり、とにかくグラジオは打倒UBの行動を積みあげています。
グラジオの変化の終着点
グラジオにとって強くなることは、リーリエを守ったこと、そしてアローラリーグの決勝でサトシと戦ったことで、目的が達成されました。
母親への信用度についても、全て1人でやるという考えが変わっていき、協力してモーンを探すという良好な関係にたどり着きました。
そしてUBへの敵視はもちろん、雪原の再会で1つのゴールを迎えます。
グラジオもルザミーネと同じように、モーンの家にいたウツロイドを見て警戒心をむき出しにしましたが、モーンがウツロイドに一緒に暮らさないかと提案した時に、即賛成しています。
元々UBへの憧れを持っていたルザミーネと比べると、UBを全否定していたグラジオがこの反応をするのはかなりの変化具合と言えます。
例えかつての因縁の相手であっても、考えていることを理解すれば、(サトシと同じように)絆を作り、家族になることもできる。この考えに至ったことが、グラジオとUBの因縁の終着点です。
ウツロイドが家族に迎え入れられたのはモーンの家族愛のおかげなので、モーン視点では自分の行いが巡り巡って精神的に成長した息子の姿を見ることに繋がっているのです。
「グラジオ、たくましくなったな」新無印112話凱旋!アローラチャンピオン!!(モーン)
その後は凱旋の回でちゃんとバトルも強くなったことを見せられています。
グラジオはモーンがいなくなった時点である程度大きくなっていたので、モーンの視点からはリーリエよりもこういった変化を感じる事が多そうですね。
リーリエのストーリー
最後に一家のお姫様、リーリエについてです。テーマとしては、ウツロイドとの因縁、強くなること、の2つです。グラジオと同じようで全く異なる2つの軸によって、リーリエのストーリーは作られます。
リーリエは絶望的な状況に追いやられた
リーリエとウツロイドの因縁としては、やはりトラウマを植え付けられたことが主です。
「わたくし、学びの対象としてポケモンが大好きで!」SM4話モクロー登場!アローラでポケモンゲットだぜ!!(リーリエ)
「リーリエは本当にポケモンが好きなんだなあ」SM8話タマゴ係はだ〜れだ?(サトシ)
「あんなにポケモンが好きなんだもん。リーリエにもポケモンと楽しく過ごしてほしいじゃない」SM14話勇気の結晶、リーリエとロコン!(マオ)
自他共に認めるポケモン大好き少女のリーリエですが、ウツロイドに襲われてからの4年間、ポケモンに触れることができなくなりました。
しかもザオボーのスリーパーが記憶を消したことで、リーリエは大好きなポケモンに触れない理由が全くわからないまま苦しみ続けることになったのです。
アニメで描かれたリーリエはサトシとシロンに出会って少しずつポケモンに触れるようになっていきましたが、そこに至るまでに4年もかかっています。
「触れるようになったのか、またポケモンに」27話出でよ!紅き眼差しルガルガン!!(グラジオ)
自分がリーリエを守ると決めて旅に出たグラジオは、そんなリーリエがシロンと触れ合う様子を見て驚いていました。
それほどリーリエの4年間は長い立ち往生の時期であり、サトシとシロンに出会って以降の成長具合は劇的なものだったことがわかります。
つまりリーリエから見ればUBは、好きという気持ちでも簡単には跳ね返せない程の強いトラウマを植え付けられ、原因すらわからない絶望的な状態に陥れられた相手なのです。
リーリエはどこか後ろ向きだった
次は強くなるということについてです。リーリエがマギアナを動かすためにお世話をすると提案した時、グラジオは「お前、本当に強くなったな」と言っていました。
このセリフの真意は、前向きな行動ができるようになった、ということだと思います。
というわけで、リーリエが強くなったと言われるまでの変化を追ってみます。
前述の通り、ウツロイドに襲われてからサトシとシロンに出会うまでの4年間は、リーリエが立ち往生していた時期です。
「普段はポケモンを(家の中に)入れておりませんので」「私が驚いてしまうから…」「その代わり、離れた場所から観察できるように、中庭にポケモン達の遊び場を作ってもらったんです」SM8話タマゴ係はだ〜れだ?(リーリエ)


「勉強してるわねリーリエ、ポケモンスクールに入れてよかったわ〜」「お母さまが入れたんじゃなくて、わたくしが入りたいって言ったの!」SM44話サトシとほしぐも!不思議な出会い!!(ルザミーネ、リーリエ)
立ち往生の間にやったことしては、遊び場作りとポケモンスクールに入ることが語られました。
しかし遊び場を作ったのは観察のためであり、触れるようになるための解決策ではありませんでした。


「論理的結論として、私がその気になりさえすれば触れるはずです!」「でもこのスクールに来てから触れたことない…」SM8話タマゴ係はだ〜れだ?(リーリエ、スイレン)
リーリエがポケモンスクールに入った時期は分かりませんが、スクールに入ったことは触れるようになることと繋がっていませんでした。
どちらかというと勉強がしたいから入ったような感じでしょうか。
「あのね、シロン。私小さい時からポケモンが好きなのに、どうしても触ることができなくて、自分でもどうしていいか分らないの。でもね、このままじゃいけないって思ってる。このままじゃいけないって」SM14話勇気の結晶、リーリエとロコン!(リーリエ)
シロンへのセリフから、リーリエにも意思はあるのに行動はできなかったという実情がわかります。
その後サトシ、シロン、そしてシルヴァディのおかげでポケモンに触れるようになりましたが、意思はあっても行動ができないという根っこの部分はもう一度出てきました。
それはルザミーネを助けるべく、リーリエがグラジオと一緒に日輪の祭壇へ向かうシーンです。
「お兄さまは何でも知ってらっしゃるのですね。私は何も知らない。いえ、忘れていました。そして今も、何も役に立ててない。私は足でまといなのでしょうか…」SM51話がんばリーリエ!決意の家出!!(リーリエ)
ルザミーネを助けたいという意志を持ってグラジオに着いてきたけれど、そんな自分の行動に迷いを見せています。
「だったらここに残るのか?」「…いいえ」「それなら前を見て進むんだ。戻った所で何も変わらないし、変えられない。母さんだって戻らない」SM51話がんばリーリエ!決意の家出!!(グラジオ、リーリエ)
そんなリーリエにグラジオはこう言います。この時点までのリーリエは、自力で何かを変えることが難しい、前を向いて行動することが難しいと、グラジオの視点からは見えているのです。
「お母さまのその、大変な目にあってもなお前向きに進むところ、大好きです!」SM55話ありがとうソルガレオ!俺たちのほしぐも!!(リーリエ)
ウルトラガーディアンズを結成したルザミーネに対するリーリエのこのセリフも、グラジオに言われたことを踏襲しています。リーリエからするとサトシもグラジオも、そしてルザミーネも、見習いたい相手というわけですね。
リーリエが得た”強さ”とは
それからしばらく経った後、グラジオがリーリエを強いと認めるシーンが2回出てきました。
1つ目はカプ・レヒレを呼び出して故人(ってことになっている)のモーンに合わせてもらおうとするグラジオに、リーリエが協力を申し出るシーンです。
「カプ・レヒレを呼び出すためにここでポケモン達を鍛えている。俺とシルヴァディ達の絆をカプ・レヒレに見せればきっと応えてくれると思うんだ。」「応えてもらいましょう!カプ・レヒレに!私がバトルのお相手を務めます!」「お前が?.......フッ、強いな。」SM105話ルガルガン決戦!サトシVSグラジオ!!(グラジオ、リーリエ)
父親に会いたいという気持ちを共有したらすぐにリーリエが協力すると言ったことは、グラジオからすると少し意外な反応だったようです。なぜなら、これこそまさに、かつてのリーリエにはできなかった意志を貫く前向きな行動だったからです。
その少し前、リーリエは野生のサンド達と一緒に、彼らの住処を荒らすバンギラスとバトルしたことがありました。
その場に立ち会った時は「どうすれば...」と少し戸惑っていたリーリエでしたが、、
「私、やってみます!放っておくわけにもいきませんから!シロン!サンド!ダブルバトルをお願いします!」SM80話サンドの嵐!氷穴のダブルバトル!!(リーリエ)
すぐさま戦う意志を見せ、サンド達に協力を申し出ました。そしてそれまで見てきたサトシのバトルを参考にしながら、無事バンギラスを撃退。この時にはすでに、リーリエは目的のためなら強敵にも臆せず立ち向かえるようになっているのです。
そんなことがあったとはつゆ知らずのグラジオからしてみれば、かつては意志があっても行動に移れなかった妹がノータイムでバトルを提案するようになっていたことは、かなりの変わりようなのです。
2つ目は、実はもう既に書いています。マギアナを動かすためにお世話をすると提案したリーリエに、グラジオが「お前、本当に強くなったな」と言ったシーンです。
そしてこのセリフの真意は、前向きな行動ができるようになった、ということだと思いますとも僕は書きましたね。
ここまでの流れを追い、更にグラジオの視点から見るとそれは一目瞭然でしょう。
「私が何をしても動かないままかもしれません。でもなんとか動かしてあげたいのです。お父様がそうしたかったように」SM116話リーリエと秘密の機巧姫!(リーリエ)
モーンがリーリエのためにと研究を重ねても動かなかったマギアナを動かそうだなんて、そう簡単なことではありません。
それでもリーリエは、かつて父親が自分に注いでくれた愛情を受け止めるために行動を起こしたのです。
これこそ、グラジオとは待ったく違う形でリーリエが得た、強くなるという成長です。
リーリエはもう因縁の相手に対しても前を向ける
ウツロイドとの因縁、前向きに行動する強さ、リーリエはこの2つを持って雪原の再開に成長の完成形を見せました。
それがかつての因縁の相手に躊躇い無く歩み寄るという行動です。


モーンの記憶が戻り、もうカンムリ雪原での幸せな生活ができなくなったと悟って1人去ろうとしたウツロイド。
そんなウツロイドに対してリーリエは、父を助けてくれたことを感謝し、一緒にいたいと意志を持って引き留めたのです。
リーリエは過去にウツロイドのせいで絶望的な状況に追いやられ、そのトラウマから今も苦手意識があってもおかしくないはずです。
それでもリーリエは即座にウツロイドを引き留めました。それが他のUBでは無くウツロイドであることによって、リーリエは因縁を完全に乗り越えていることが証明されたと言えるのです。
前を向いて進めと言ったグラジオでもなく、大変な目にあってもなお前向きに進んだルザミーネでもなく、ここまで強さを積み重ねてきたリーリエがこの1歩目を踏み出したことにこそ、成長のストーリーが詰まっているのです。
「こうして、モーン、ルザミーネ、グラジオとリーリエの家族は、再び1つとなり、新たな未来へと歩み始めたのだった。」To Be Continued
モーンがいなくなったことで残された3人は大変な目に遭うことになったけど、モーンのおかげで3人のストーリーが終わったんだよなぁ。。
モーンがいなくならなければ4人はずっと幸せだったかもしれないけど、モーンのおかげでウツロイドという家族が増えたんだよなぁ。。
家族全員、マジでめちゃくちゃ幸せになってくれ。。
おたすけ評価
モーンとリーリエ、雪原の再会:★★★★★★★★★★
個人評価:★★★★★★★★★★
おたすけ評価星マックス!
- 過去キャラ回の評価基準
- 起承転結・主役の活躍度
- キャラクター
- ファンサービス
- ストーリー
- 展開
- 演出
- 作画
- その他
上記の内幾つかの項目を満たしている。またはどれかに特化しているか。
赤文字がプラスポイントで青文字がマイナスポイントです。
また上記の項目は上から重要な物になっていくがこれは人の好みによって評価が変わるためあくまでもおたすけの評価として見てください。
キャラクター


リーリエとグラジオの掘り下げに加点です。
この2人はサンムーンの中で、各々違った形の成長を積み重ねました。
この回で2人が見せたウツロイドへの行動・態度は、彼らの成長具合の掘り下げです。
グラジオはUBとの因縁が、リーリエは加えて強くなることが掘り下げられている、となります。
成長の加点としてはファンサービスで入ります。
ファンサービス
上記の掘り下げと成長に加えて、リスペクトに加点です。
リスペクトについては、やはりシリーズを跨いでこの回を作ったという点がドデカいです。
仮にモーンがカンムリ雪原ではなくアローラ地方のポケリゾートとかにいたら長旅の苦労感という演出が減ります。
かといって、サンムーンの放送中にリーリエが他地方への長旅でいなくなる展開も現実的ではありません。
サンムーンの最終回はみんな夢に向かって歩き出しましたエンドなので、リーリエも足並みを合わせる形で、旅に出ることでストーリー終了でも本来問題では無いのです。
にも関わらず、家族4人分のストーリーを完璧に締める回がシリーズを越えて作られました。
4人のキャラクターに対するリスペクトは、もはやこの回の根幹とも言えるでしょう。
ストーリー
シリーズを跨いでリーリエ一家が紡いできたストーリーで1つ、この回の話の構成で1つ、ドラマ性に加点です。
たくさん書いてきましたが、この回でリーリエ一家が再開し、ウツロイドを家族に迎えいれたことによって、4人分のストーリーが締められました。
モーンは家族愛が実を結び、ルザミーネは家族愛とUBへの憧れが報われ、グラジオはUBとの因縁と家族になる成長を見せ、リーリエはUBとの因縁を断ち切れる程に強くなったことを証明しました。
それぞれが積み上げてきたモノがとてもとても長い時間を経て上手く絡み合っているという点でドラマ性が強いです。
そしてこの回1つに限っても、モーンの発見だけに収まらず、記憶を取り戻して本当の再会を遂げ、更に新しい家族を迎え入れるという+αの展開まで用意されていました。
モーンが記憶喪失と分かってから記憶が戻るまで、丁寧にヒントを集めながらも間延びしないストーリーの起承転結が描かれています。
展開
これもたくさん書いてきましたが、ウツロイドを家族として迎え入れるという展開は神の加点ポイントです。
リーリエが躊躇い無くウツロイドに歩みよったことがリーリエの成長の、ルザミーネとグラジオがウツロイドと家族になることに即賛成したことがUBとの因縁の、それぞれの着地点として最適解と言うほか無い展開のさせ方です。
演出
特に3つのシーンで、表現に加点です。
まず1つ、モーンが記憶を取り戻してルザミーネが涙を流すシーンの心情表現です。
名前を呼ばれて再会をやっと実感できたでしょう。モーンいなくなった時のショックやその後の苦労、そして再会の喜び等、色々な感情と共に涙がこみ上がったのでしょう。感情移入を促す感動演出です。


流石は気合いの入った泣きのシーンに定評がある家族のお母さまである。
そして2つ、顔と呼べる部分が無いウツロイドをリーリエに見立てる演出について、これまた深い心情描写です。


リーリエとウツロイドがデザイン的にどこか似ていることはみなさん共通の感覚と思いますが、似ていることに合理的な理由はありません。
原作のゲームではルザミーネがウツロイドを愛するが故に娘にも似たような恰好をさせているという(確度はそれなりの)考察がありますが、少なくともアニメにはそういった描写はゼロです。
そんな中、みんな似てると思っていることを前提とすることで、顔の無いウツロイドに表情を与えるという演出を成り立たせています。しかしリーリエの顔で笑うだけで普段のウツロイドまで可愛く見えてくるからずるい。


最後3つ目、ウツロイドを家族に迎え入れるシーンの光が指す演出です。
窓の汚れが剥がれ落ち、ゆっくりと光が差し込んで、暗かった部屋の中が明るくなっていきます。
リーリエ達のこれまでの苦労とこれからの幸せか、ウツロイドのこれまでの偽りの幸せとこれからの真の幸せか、はたまた両方か、「暗い」から「明るい」への変化はこの回によって変わったことと繋がりやすいです。
シンプルに綺麗なこともあり、この感動シーンに相応しい演出と言えるでしょう。
作画
最後に2シーン、作画の加点が入ります。
今回の神アクションシーン
— おたすけ (@otsk_poke) 2022年5月20日
忍田さんらしくない激しい動きだなーそれじゃあ香月さんかなーと思ったけど香月さんの方が崩しを入れない人だから忍田さんかな多分…
忍田さん毎回原画担当するたびに色々変わってる部分が多いから予測不可能だし明らかにどんどんすごい動きになってる pic.twitter.com/0BrE71KRH4
ピカチュウの神アクションシーンにたまらず加点です。このモーションのかっこよさ、。
そしてもう1つ、リーリエとウツロイドが笑いあうシーンです。


「2人のリーリエ、ですね」
美少女を綺麗に描くことに命かけてる人でもいるんでしょうか。
表情と体の動きの細かさに気合を感じます。
全体的に絵も綺麗だったので、美観で加点が入りました。
最後のまとめ
現行シリーズのレギュラーでもないのにこんな神回が生み出されるあたり、リーリエって凄いキャラですよね。
リスペクト満載で本当に感動できる最高の回に感謝してもしきれません。。
サンムーンを愛する僕はこれで無事成仏することができます。みなさん今までありがとうございました。(記事はまだまだ書いていくので次回もよろしくお願いします。)